2021年は会計制度が大きく変わる年。収益認識基準の導入で財務諸表の見た目が大きく変わる会社も!

2021年6月も今日で終わりです。
経理職にとって、6月末は株主総会が終わりやっと前期が終わった感があり、さらに四半期決算が始まります。
つまり、やっと終わったと思ったら次の最初の山場が来るという地獄のようなタイミングです(笑)

さて、2021年度は会計制度が大きく変わります。
それは収益認識基準の導入が2021年度から開始されるからです。

日本の売上基準は曖昧

収益認識基準とは単純に言うと、売上基準のルールを作るということです

実は日本の会計上、売上計上の基準は曖昧で一般に公正妥当と認められる会計基準に則っていれば問題はありません。
明確なルールがなく各企業の判断に任せていました。

たとえば、スポーツジムの年会費で12万円を受け取った場合、毎月1万円ずつ売上にしても、受け取った月に12万円の売上を計上しても問題はありません。
しかし、スポーツジムAとスポーツジムBがそれぞれ異なった売上を認識すると、このスポーツジム同士を比較することができません。

また、商社のように仲介業をしている場合だと、100円で仕入て150円で販売した際に売上を150円で認識しても手数料収入として50円を売上で計上しても問題ありません。

このように、日本の会計基準の中で曖昧だった売上の計上基準に一定のルールを作ったのが今回の収益認識基準です。
収益認識基準では新しいルールを決めて、収益を「いつ」「いくらで」「どのように」計上するかルールを決めました

なぜ収益認識基準を導入するのか?

それでは何のため、誰のために収益認識基準を導入するのでしょうか?

単純に言うと、比較できない売上を公平に比較する為です。
そして、なぜ公平に比較する必要があるのか、それは私達投資家の為です。

売上高は企業規模を比較するうえで非常に大きな指標です。

同じ取引でも売上が異なれば、私達投資家にミスリードを起こす可能性が高く、間違って投資をする可能性が高くなります。

つまり、2021年度以降は売上高の比較は簡単にできるようになるということです。

導入されるのは大企業に限られますが、私達が投資をする上場企業は全て大企業になりますので安心してください。

 上場会社上場準備会社上場予定のない会社
大会社適用対象適用対象適用対象
大会社以外の会社適用対象適用対象任意適用

IPOを目指す会社も適用対象になりますので、安心してください。

2021年度は企業によっては大きく数字が変わる

さて、2021年度から収益認識基準が導入されることによって何が変わるでしょうか?

それは会社の業績が大きく変わります

先ほどのスポーツジムAとBの場合、3月に年会費を受け取ると12万円だった売上が1万円になるので、利益も11万円減ってしまいます。
また、売上を150円、原価を100円計上していた企業が手数料収入50円となれば、利益は変わりませんが売上は1/3に減ってしまいます。

元々収益認識基準を導入していた企業は変わりありませんが、今回の収益認識基準の導入により会社のPLの見た目は大きく変わったり、利益が大きく変わったりするパターンがあります。

逆に言うと、同じ物差しで会社の業績を比べることができるようになるということです。

実務面はとっても大変

ここからは実務面での愚痴です。

この判断は取引の単位で判断される為、一つ一つの取引や契約を見て判断する必要があります。
つまり、膨大な会社のトランザクションを一個ずつ見ていく必要があるということです。

経理は会社の取引は詳しいですが、契約の詳細までは知りません。
もちろんある程度は知っていますが、契約書の一言一句までは見ていませんし、追いかけるのは非常に大変な作業です。

さらに言うと、税務と会計がさらに離れていきます。
法人税もしかり面倒なのは消費税

手数料収入50円にしたとしても、仮受消費税は10円と仮払消費税5円に分けなければなりません。
法人税の計算も大きくは変わりませんが、どんどん離れていく感が半端ないです。

税務と会計は近しいようで、微妙に違うのが嫌になっていきます。
経理をしている方なら、一番の悩みの種だと思います(笑)

収益認識基準のまとめ

それでは収益認識基準のまとめを見てみましょう。

①収益認識基準とは売上計上のルールのこと
②日本には売上計上のルールがなかったので、基準を定めた
③具体的には「いつ」「いくらで」「どのように」計上するかルール
④企業のPLの見た目は大きく変わるが、比較はしやすくなる
⑤実務面はかなりの面倒で大変な変更
2021年度から導入される収益認識基準について簡単にまとめてみました。
3月決算の会社は今の進行期から導入されます。
有価証券報告書や招集通知を見る方は少ないと思いますが、今年はしっかりと確認をした方が良いです。
もし、見た目や利益が大きく変わっている場合は収益認識基準が理由の可能性があります。
会計基準の変更は世間ではあまり話題になりませんが、今回の収益認識基準の導入は10年一回くらいの大幅な変更です!
ぜひとも注目してみてください!
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